【判例解説】就業規則に基づく所持品検査

1 はじめに

  使用者が、就業規則を根拠に、労働者に対し、所持品検査をすることができるのでしょうか。

  所持品検査は、労働者の人権侵害のおそれを伴うものであり、無制限にできるものではありません。

  それでは、所持品検査の適法性の判断においては、どのような点が考慮されるのでしょうか。

  ここでは、鉄道会社の所持品検査が問題となった最高裁判所の裁判例を紹介します。

2 裁判例

  最高裁判所は、鉄道会社における所持品検査について、「使用者がその企業の従業員に対して金品の不正隠匿の摘発・防止のために行う、いわゆる所持品検査は、被検査者の基本的人権に関する問題であって、その性質上つねに人権侵害のおそれを伴うものであるから、たとえ、それが企業の経営・維持にとって必要かつ効果的な措置であり、他の同種の企業において多く行われるところであるとしても、また、それが労働基準法所定の手続を経て作成・変更された就業規則の条項に基づいて行われ、これについて従業員組合または当該職場従業員の過半数の同意があるとしても、そのことの故をもって、当然に適法視されうるものではない。問題は、その検査の方法ないし程度であって、所持品検査は、これを必要とする合理的理由に基づいて、一般的に妥当な方法と程度で、しかも制度として、職場従業員に対して画一的に実施されるものでなければならない。そして、このようなものとしての所持品検査が、就業規則その他、明示の根拠に基づいて行われるときは、他にそれに代わるべき措置をとりうる余地が絶無でないとしても、従業員は、個別的な場合にその方法や程度が妥当を欠く等、特段の事情がないかぎり、検査を受認すべき義務があり、かく解しても所論憲法の条項に反するものでない」旨判示したものがあります。

3 まとめ

  所持品検査が適法とされる場合であっても、所持品検査を拒否したことを理由に懲戒処分をする場合には、懲戒処分の妥当性が問題となる場合があります。

  使用者側の労働問題について、分からないことがありましたら、弁護士までご相談ください。

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