【判例解説】職場における政治活動と懲戒処分

1 はじめに

労働者には、政治活動の自由が保障されています。

その一方で、使用者の立場からは、労働者に企業内で無制限に政治活動の自由を認めると、企業活動が阻害される可能性があり、就業規則によって、制限できないかという問題があります。

2 問題の所在

労働者の政治活動の自由は、憲法によって保障されています。

もっとも、企業内で無制限に政治活動の自由が認められるものではありません。

使用者が就業規則で企業内の誠実活動の自由を制約した場合、その効力はどうなるのでしょうか。

3 最高裁判所の裁判例

企業内の政治活動を禁止し、その就業規則に違反したとして懲戒処分をしたケースで、次のとおり判示しています。

(1)企業内での政治活動禁止について

最高裁判所は、「一般私企業の使用者が、企業秩序維持の見地から、就業規則により職場内における政治活動を禁止することは、合理的な定めとして許されるべきであり・・・」「もっとも、・・・形式的に右規定に違反するようにみえる場合であっても、実質的に局所内の秩序風紀を乱すおそれのない特別の事情が認められるときには、右規定の違反になるとはいえないと解するのが、相当である。」旨判示しています。

(2)職務専念義務について

最高裁判所は、公社法34条2項の規定について、「これは職員がその勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職務遂行のために用い職務にのみ従事しなければならないことを意味するものであり、右規定の違反が成立するためには現実に職務の遂行が阻害されるなど実害の発生を必ずしも要件とするものではないと解すべきである。」旨判示しています。

(3)休憩時間中のビラ配布について

最高裁判所は、休憩時間中のビラ配布について、「・・・形式的にいえば、公社就業規則5条6項に違反するものであることが明らかである。もっとも、右規定は、局所内の秩序風紀の維持を目的としたものであるから、形式的にこれに違反するようにみえる場合でも、ビラの配布が局所内の秩序風紀を乱すおそれのない特別の事情が認められるときは、右規定の違反になるとはいえないと解するのを相当とする。」旨判示しています。

4 まとめ

この最高裁判所の裁判例(最高裁判所判決昭和52年12月13日)では、結論として、懲戒処分を有効と判断しました。

もっとも、企業内での政治活動の自由を就業規則で無制限に制約できるものではなく、事案によって、懲戒処分が無効となる場合もあると考えられます。

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