株主の議決権を行使する代理人の資格を制限する定款の効力

はじめに

  会社法第310条1項前段は、「株主は、代理人によってその議決権を行使することができる」旨規定しています。

  それでは、定款で、議決権行使の代理人の資格を当該会社の株主に限る旨を定めた場合、会社法第310条に違反し、無効とならないか、問題となります。

問題の所在

  会社の定款は、会社の基本的な規則ですが、強行法規に違反する定款の規定は、無効になります。

  たとえば、株主が、代理人によって議決権行使をすることが全くできない(株主自身が、株主総会に出席するなどして、自ら議決権を行使することしか認めない)定款の規定は、個人的な見解ですが、無効になると考えられます。

  もっとも、ここで問題となっていることは、株主に代理人による議決権行使を認めつつ、その代理人の資格を当該会社の株主に限る定款の規定の効力です。この規定は、会社法第310条1項に違反して無効なのでしょうか。

判例

  最高裁判所の裁判例は、昭和56年改正前の商法第239条3項(会社法第310条1項に相当する規定です)について、「議決権を行使する代理人の資格を制限すべき合理的な理由がある場合に、定款の規定により、相当と認められる程度の制限を加えることまでも禁止したものとは解されず、右代理人は株主にかぎる旨の・・・定款の規定は、株主総会が、株主以外の第三者によって攪乱されることを防止し、会社の利益を保護する趣旨にでたものと認められ、合理的な理由による相当程度の制限ということができる」旨判示し、定款の規定を有効であると解釈しました。

まとめ

  もっとも、このような定款規定が有効であっても、実際には、定款の規定を制限的に解釈して運用していることも少なくないと思います。

  また、株主としての議決権行使について、株主でない弁護士を代理人として委任したケースでは、議決権の代理行使を認める下級審の裁判例もありますし、これと反対の見解をとる下級審の裁判例もあり、ケースによっては、現場で難しい判断を迫られることも考えられます。

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