代表取締役解職が議題になっている取締役会の決議について、当該代表取締役が特別の利害関係を有する者にあたるか?

はじめに

取締役会の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができません。

その趣旨は、取締役は、忠実義務を負っているところ、取締役が忠実義務に違反して議決権を行使する危険性が高い場合に、その義務違反を予防し、取締役会の決議の公正を担保するためであると考えられます。

問題の所在

会社法は、取締役会の決議について、特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない旨規定しています。

それでは、代表取締役の解職が議題となっている取締役会の決議について、当該代表取締役は、特別の利害関係を有する取締役に該当するのでしょうか。 

裁判例

最高裁判所は、「代表取締役の解任に関する取締役会の決議については、当該代表取締役は、商法260条ノ2第2項により準用される同法239条5項にいう特別の利害関係を有する者にあたると解すべきである。

けだし、代表取締役は、会社の業務を執行・主宰し、かつ会社を代表する権限を有するものであって(商法261条3項・78条)、会社の経営、支配に大きな権限と影響力を有し、したがって、本人の意思に反してこれを代表取締役の地位から排除することの当否が論ぜられる場合においては、当該代表取締役に対し、一切の私心を去って、会社に対して負担する忠実義務(商法254条3項・254条ノ2参照)に従い公正に議決権を行使することは必ずしも期待しがたく、かえって、自己個人の利益を図って行動することすらあり得るのである。それゆえ、かかる忠実義務違反を予防し、取締役会の決議の公正を担保するため、個人として重大な利害関係を有する者として、当該取締役の議決権の行使を禁止するのが相当だからである。」旨判示しています。

まとめ

実務上は、代表取締役解職の議案においては、当該代表取締役が特別利害関係人に当たるとして、対象取締役を取締役会の議決から排除して扱い、法的な争点を生じさせないことが相当だと思います。

0532-52-0991 0532-52-0991