【判例解説】非違行為から長期間経過した後の懲戒処分の効力

1 はじめに

 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければなりません。

 また、労働基準法第89条9号は、就業規則の記載事項として、「表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項」を規定しています。

2 問題の所在

 非違行為から長期間経過した後に、懲戒処分をすることができるのでしょうか。

 非違行為があったという事実からは、懲戒処分が可能なようにも思われます。

 一方、非違行為から長期間経過した後に懲戒処分をできるとすると、労働者の地位を不安定にするのではないかとも思われます。

3 裁判例

 最高裁判所には、

 「使用者の懲戒権の行使は、企業秩序維持の観点から労働契約関係に基づく使用者の権能として行われるものであるが、就業規則所定の懲戒事由に該当する事実が存在する場合であっても、当該具体的事情の下において、それが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものとして是認することができないときには、権利の濫用として無効になると解するのが相当である。」

 「以上の諸点にかんがみると、本件各事件から7年以上経過した後にされた本件諭旨退職処分は、原審が事実を確定していない本件各事件以外の懲戒解雇事由について被上告人が主張するとおりの事実が存在すると仮定しても、処分時点において企業秩序維持の観点からそのような重い懲戒処分を必要とする客観的に合理的な理由を欠くものといわざるを得ず、社会通念上相当なものとして是認することはできない。そうすると、本件諭旨解雇処分は権利の濫用として無効というべきであり、本件諭旨退職処分による懲戒解雇はその効力を生じないというべきである。」

 旨判示したものがあります。

4 まとめ

 非違行為があった場合、懲戒処分のタイミングをどうするかも、よく検討する必要があると思われます。

 使用者側の労働問題については、弁護士までご相談ください。

0532-52-0991 0532-52-0991