はじめに
会社法362条4項は、取締役会は、次に掲げる事項その他重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない旨規定しており、会社法362条4項1号には、「重要な財産の処分及び譲り受け」とあります。
また、平成17年改正前商法260条2項1号では、「重要ナル財産ノ処分」について、取締役会の決議が必要である旨規定されていました。
問題の所在
株式会社が、当該株式会社の財産を処分するにあたり、重要な財産の処分に該当するか否かは、どのように判断されるのでしょうか。
裁判例
最高裁判所の裁判例では、「商法260条2項1号にいう重要な財産の処分に該当するかどうかは、当該財産の種類、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様及び会社における従前の取り扱い等の事情を総合的に考慮して判断すべきものと解するのが相当である。」旨判示したものがあります。
まとめ
この裁判例では、譲渡した財産(株式)の帳簿価額が、当該会社の総資産の約1.6パーセントに相当すること、株式の適正時価が把握し難くその代価如何によっては当該株式会社の資産及び損益に著しい影響を与え得るものであること、株式の譲渡は当該株式会社の営業のため通常行われる取引に属さないことなどを指摘しています。結論としては、破棄差戻しをしています。
裁判例をふまえて、内規を整えるなどして、取締役会の決議が必要な事項については、取締役会の決議をして、紛争を未然に防ぐ工夫が必要だと思います。