株主総会決議取消しの訴えを提起した後、3か月経過後の取消事由の追加

はじめに

  株主総会決議取消しの訴えは、株主総会決議の日から3か月以内に提起しなければなりません(会社法第831条1項)。

  それでは、株主総会決議の日から3か月以内に提起された株主総会決議取消の訴えにおいて、3か月経過後に新たな決議取消事由を主張することはできるのでしょうか。

問題の所在

  会社法第831条1項は、株主総会決議取消しの訴えは、株主総会決議の日の3カ月以内に提起しなければなりません。

  もっとも、いったん、3か月以内に株主総会決議取消しの訴えが提起されれば、訴訟自体は、提起されているので、株主総会の日から3か月経過後に取消事由を追加しても、会社法第831条1項の文言には、形式的には抵触しません。やや専門的な表現になりますが、株主総会決議取消しの訴えの訴訟物について、取消事由ごとに訴訟物が観念されるのではなく、取消事由が複数あっても、訴訟物は一つと考えられます。

  一方で、3か月以内に株主総会決議取消しの訴訟を提起すれば、3か月経過後も、新たな取消事由の主張を追加できるのであれば、瑕疵ある決議の効力を早期に安定させるという規定の趣旨を損なう結果にもなりかねません。

  そこで、どのように考えればよいのでしょうか。

裁判例

  最高裁判所は、「株主総会決議取消しの訴えを提起した後、商法248条1項(会社法第831条1項に相当)所定の期間経過後に新たな取消事由を追加主張することは許されないと解するのが相当である。けだし、取消しを求められた決議は、たとえ瑕疵があるとしても、取り消されるまでは一応有効のものとして取り扱われ、会社の業務は右決議を基礎に執行されるのであって、その意味で、右規定は、瑕疵のある決議の効力を早期に明確にさせるためその取消しの訴えを提起することができる期間を決議の日から3カ月と制限するものであり、また、新たな取消事由の追加主張を時期に遅れない限り無制限に許すとすれば、会社は当該決議が取り消されるのか否かについて予測を立てることが困難となり、決議の執行が不安定になるといわざるを得ないのであって、そのため、瑕疵のある決議の効力を早期に明確にさせるという右規定の趣旨は没却されてしまうことを考えると、右所定の期間は、決議の瑕疵の主張を制限したものと解すべきであるからである。」旨判示しています。

まとめ

  上記裁判例に照らせば、株主総会決議取消しの訴えにおいて、3か月経過後の取消事由に関する主張は、「新たな取消事由を追加主張」したと評価できるか否かがポイントになると思われます。

  個人的には、会社としては、株主総会決議取消しの訴えを提起されるリスクを減らすため、会社法の規定にしたがい、適正に手続きを履践することが重要だと思います。

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