株主総会の招集通知がなされない場合、株主全員が出席した株主総会の決議の効力

はじめに

  株主総会を開催するにあたって、取締役(取締役会設置会社においては取締役会)の決定にしたがい、株主に招集通知をして、株主が株主総会に出席し、適法な株主総会が成立します。

  もっとも、多くの小規模な株式会社においては、株主の数はきわめて限定された人数であり、株主が取締役となっているケースも多く、株主総会の招集通知がされることなく、株主総会が開催されていることも多いと思います。

  このような場合、招集手続を欠いた株主総会は、有効に成立するのでしょうか。

問題の所在

  株主総会の招集手続が必要とされる趣旨は、株主総会の開催と会議の目的たる事項を知らせることによって、株主に株主総会の出席の機会と株主総会の議事、議決に参加するための準備の機会を与えるためであると解釈されます。

  それでは、株主全員が株主総会に出席することにより、株主総会の招集手続がなされない場合でも、有効に株主総会が成立するのでしょうか。

  また、代理出席により、株主全員が株主総会に出席したものとされる場合にも同じように解釈できるのでしょうか。

裁判例

  最高裁判所は、「商法が、231条(現会社法298条に相当)以下の規定により、株主総会を招集するためには招集権者による招集の手続を経ることが必要であるとしている趣旨は、全株主に対し、会議体としての機関である株主総会の開催と会議の目的たる事項を知らせることによって、これに対する出席の機会を与えるとともにその議事及び議決に参加するための準備の機会を与えることを目的とするものであるから、招集権者による株主総会の招集の手続を欠く場合であっても、株主全員がその開催に同意して出席したいわゆる全員出席総会において、株主総会の権限に属する事項につき決議をしたときは、右決議は有効に成立するものというべきであり・・・また、株主の作成にかかる委任状に基づいて選任された代理人が出席することにより株主全員が出席したこととなる右総会において決議がされたときには、右株主が会議の目的たる事項を了知して委任状を作成したものであり、かつ、当該決議が右会議の目的たる事項の範囲内のものである限り、右決議は、有効に成立するものと解すべきである。」旨判示しています。

まとめ

  株主総会において、招集手続が必要とされる趣旨をふまえて、株主全員が出席した株主総会は、有効に成立すると考えられます。

  さらに、最高裁判所の判例は、株主の代理人が出席した結果、株主全員が出席したこととなる株主総会において、「株主が会議の目的たる事項を了知して委任状を作成したものであり、かつ、当該決議が右会議の目的たる事項の範囲内のものである限り」という限定をつけて、株主総会が有効に成立することを認めています。

  個人的な見解ですが、法律実務に携わる立場からは、法的な争点をなるべくつくらないように、手続を履践することが重要だと思っています。

  なお、会社法第300条本文は、株主総会は、株主全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる旨規定しています。また、会社法第319条1項は、取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす旨規定しています。

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