はじめに
会社法制定前の商法265条は、会社・取締役間の利益相反取引に、取締役会の承認を要求していました。
会社法は、利益相反取引について、取締役会非設置会社については、株主総会の普通決議による承認が、取締役会設置会社においては、取締役会の承認がそれぞれ必要である旨規定しています。
承認がない取引は、会社と当該取締役との間では無効となると考えられます。もっとも、第三者に対しては、会社は、当該取引が利益相反取引にあたること及び法律が必要とする承認を欠くことについて、その第三者の悪意を証明しなければ無効を主張することができないと考えられます。
問題の所在
それでは、株主全員の合意がある場合、利益相反取引の効力は、どのようになるのでしょうか。利益相反取引の規制が、誰の利益を守ろうとしているのか、問題となります。
裁判例
最高裁判所は、「商法265条が取締役と会社との取引につき取締役会の承認を要する旨定めている趣旨は、取締役がその地位を利用して会社と取引をし、自己又は第三者の利益をはかり、会社ひいて株主に不測の損害を蒙らせることを防止することにあると解せられるところ、・・・実質上の株主の全員・・・の合意によってなされたものというのであるから、・・・別に取締役会の承認を要しないことは、・・・立法趣旨に照らし当然であって、右譲渡の効力を否定することは許されない。」旨判示しています。
まとめ
実務的には、無用な争いを生じさせないために、会社法の要求する株主総会、取締役会を開催し、議事録を残しておくことが望ましいと思います。

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