はじめに
代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をなす権限が認められています。
また、代表取締役の代表権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができません。
なお、会社法では、代表取締役をおいていない場合には、各取締役に代表権が認められます。
問題の所在
代表取締役が、取締役会の決議が必要な行為について、取締役会の決議を経ないでした取引行為の効力は、どうなるのでしょうか。
取締役会の決議を経ないでした取引行為は、一見すると無効となるとも考えられます。
一方で、代表取締役の代表権に対する取引の相手方の信頼を保護する必要があり、取引行為の効力が問題となります。
裁判例
最高裁判所は、「株式会社の一定の業務執行に関する内部的意思決定をする権限が取締役会に属する場合には、代表取締役は、取締役会の決議に従って、株式会社を代表して右業務執行に関する法律行為をすることを要する。しかし、代表取締役は、株式会社の業務に関し一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する点にかんがみれば、代表取締役が、取締役会の決議を経てすることを要する対外的な個々的取引行為を、右決議を経ないでした場合でも、右取引行為は、内部的意思決定を欠くに止まるから、原則として有効であって、ただ、相手方が右決議を経ていないことを知りまたは知り得べかりしときに限って、無効である、と解するのが相当である。」旨判示しています。
まとめ
裁判例は、民法93条但書を類推適用して取引の相手方が、取締役会決議の経ていないことを知りまたは知り得べかりしときに限って、無効であるとの結論を導いています。
そもそも、このようなことが問題とならないように、取締役全員が会社法の規定を理解して実践することが重要だと思います。

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