【判例解説】就業規則の不利益変更について

1 はじめに

就業規則を労働者にとって不利益に変更した場合、労働者を拘束するのでしょうか。

2 問題の所在

就業規則の変更にあたっては、労働者の同意は必要とされていません。

それでは、労働者にとって不利益な内容に就業規則が変更される場合、不利益な内容に変更された就業規則は、労働者を拘束するのでしょうか。 

3 裁判例

最高裁判所は、「新たな就業規則の作成又は変更によって労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されないが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことは許されない。」

「そして、右にいう当該規則条項が合理的なものであるとは、就業規則の作成又は変更が、その必要性及び内容の両面からみて、それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても、なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を是認することができるだけの合理性を有するものであることをいい、特に、賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については、当該条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずるものというべきである。」

「右の合理性の有無は、具体的には、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである。」

 旨判示しています。

4 まとめ

就業規則を労働者に不利益に変更することについて、最高裁判所の裁判例では、上記のように、一定の条件のもと労働者を拘束することが認められる場合があります。

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