残業代請求訴訟の訴状を受け取った場合の対応について弁護士が解説

1 はじめに

  労働者から、残業代請求訴訟が提起され、裁判所から郵送で、訴状を受け取った場合、どのように対応したらよいのでしょうか。

  なお、個別の事案については、ご依頼をされる弁護士に良く確認をしてください。

2 訴訟手続の流れ

(1)訴状の送達

   訴状を受け取った時点において、第1回口頭弁論期日、答弁書の提出期限が定められていることが通常です。

   裁判所から届いた書類には、訴状、証拠、口頭弁論期日の呼び出し状、連絡文書等が同封されていることが通常です。

(2)答弁書の提出、第1回口頭弁論期日

   まず、答弁書を作成して、期限までに提出する必要があると思います。

   答弁書を提出することなく、第1回口頭弁論期日に欠席すると、原告の言い分どおりの判決がされることがありますので、注意が必要です。

(3)第2回目以降の期日

   第2回目以降、原告、被告がそれぞれ必要な主張、立証をします。

(4)和解

   当事者間で合意に達すれば、和解が成立し、訴訟手続は、終了します。

   裁判官から、当事者に対し、和解案が提示される場合もあります。

   尋問が行われた後に、和解の協議がされる場合もあります。

(5)尋問

   当事者の方や証人の方などの尋問が行われる場合があります。

(6)判決

   和解に達することなく、審理が終わると、判決期日が指定され、判決が言い渡されます。

3 残業代の金額の計算方法

(1)はじめに

   使用者は、労働者に法定時間外労働、法定休日労働、深夜労働を行わせた場合、法令で定める割増率以上の率で算定した割増賃金を支払わなければなりません。

(2)割増賃金率

  ①時間外労働 2割5分以上

   1か月60時間を超える時間外労働については、5割以上

  ②休日労働 3割5分以上

  ③深夜労働 2割5分以上

   なお、例えば、休日労働が深夜労働の時間に行われた場合には、割増賃金率は、6割(3割5分+2割5分)になります。

(3)割増賃金の計算方法

   割増賃金額は、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額(1時間あたりの金額)×(時間外労働、休日労働または深夜労働を行わせた時間数)×割増賃金率で計算します。

(4)割増賃金の基礎となる賃金

   割増賃金の基礎となるのは、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額です。

   割増賃金の基礎となる賃金に関し、下記の①~⑦は、割増賃金の基礎となる賃金から除外されます。

   ①家族手当

   ②通勤手当

   ③別居手当

   ④子女教育手当

   ⑤住宅手当

   ⑥臨時に支払われた賃金

   ⑦1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

   ただし、例えば、家族手当という名目で支給されていれば、常に、割増賃金の基礎となる賃金から除外されるとは限らず、実態がポイントになります。

(5)就業規則の方が有利な場合

   労働基準法の規定より就業規則の方が有利な場合、就業規則の規定に基づいて計算することが通常です。

4 まとめ

  労働法の分野は、法律の改正や新たな裁判例が出されるなど、変化の速い方分野だと思います。個別の事案については、ご依頼、ご相談をされる弁護士によく相談をしてください。

  企業側の労働問題について、分からないことがありましたら、弁護士までご相談ください。

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