1 はじめに
(1)総論
従業員が増えて、就業規則を作成しないといけないが、どのように作成したらよいか分からない。
就業規則を作成したが、10年以上変更していない。
ひな型をそのまま利用して就業規則を作成した。
このようなことはないでしょうか。
ここでは、就業規則について、簡単に説明します。
個別の事案においては、弁護士までご相談ください。
(2)就業規則の作成、届出
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、行政官庁に届け出をしなければなりません(労働基準法89条)。就業規則を変更した場合も同様です。
(3)就業規則と労働契約
労働契約法第7条本文は、労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする旨規定しています。
もっとも、労働契約法第7条但書は、ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない旨規定しています。
なお、労働契約法第12条は、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。」旨規定しています。
(4)就業規則の作成に向けて
それでは、就業規則には、どのような事項を記載したらよいのでしょうか。
また、就業規則は、どのような手続で、届出等をすればよいのでしょうか。
ここでは、労働組合のない、小規模な会社を前提に説明します。
2 就業規則には、どのような事項を記載したらよいですか?
労働基準法89条は、就業規則に記載すべき事項を規定しています。
労働基準法89条各号に定められた事項は、就業規則の必要的記載事項になります。
就業規則の必要的記載事項については、絶対的記載事項と相対的記載事項があります。
絶対的記載事項は、必ず記載しなければならない事項であり、例えば、始業、就業の時刻、休憩時間などがこれにあたります。
相対的記載事項は、使用者が当該記載事項について、制度を設ける場合には、記載することが必要な事項であり、例えば、退職手当に関する事項がこれにあたります。
また、必要的記載事項以外の事項も就業規則に記載することができます。これは、任意的記載事項になります。
3 就業規則が必要になるタイミングは、どのようなタイミングですか?
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、監督官庁に届け出をする必要があります。
もっとも、10人に達する前でも、就業規則を整備したほうがよい場合もあります。
4 就業規則の届出に向けた手続
(1)労働者の意見聴取
労働基準法は、使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においては、その労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない旨規定しています。
(2)届出
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を行政官庁に届出をする必要があります。常時十人以上の労働者を使用する使用者が、既に存在する就業規則を変更した場合にも、行政官庁に届出をする必要があります。
使用者は、就業規則の作成または変更を行政官庁に届け出る際には、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表者する者の意見を記載した書面を添付しなければなりません。
(3)周知
労働基準法は、使用者は、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない旨規定しています。
なお、例えば、常時5人の労働者を使用する使用者(労働基準法上、就業規則の届出義務を負っていない使用者)が就業規則を作成した場合でも、労働者に周知させなければなりません。
5 就業規則を整備するために必要なステップ
(1)就業規則については、まず、会社の実情を把握する必要があります。
ひな形をそのまま利用するのではなく、会社の実情にあった就業規則を作成する必要があると思います。
(2)労働者の意見聴取、届出、周知
就業規則を作成しましたら、上記のとおり、労働者の意見聴取、届出、周知が必要になります。
なお、常時十人未満の労働者を使用する使用者(労働基準法第89条による届出義務を負わない使用者)が、常時十人以上の労働者を使用するに至った場合においては、遅滞なく就業規則を行政官庁に届出をしなければなりません。
6 弁護士による就業規則の作成・変更
弁護士は、労働事件に関する訴訟や労働審判などを経験しています。
労働事件での経験等を踏まえて、就業規則の作成を助言することができます。
7 就業規則の作成・変更については弁護士にご相談ください
就業規則の作成、変更について、分からないことがございましたら、弁護士までご相談ください。